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あなたのための物語

あなたのための物語 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

あなたのための物語 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)


長谷敏司先生の本は、『戦略拠点32098 楽園』がすごく好きだけど『円環少女』が読みづらすぎて遠ざかっていたんですが、長谷先生のブログを読んだら『楽園』に近いと書いてあった*1ので興味を持ち、読んでみました。
脳内に疑似神経を形成して経験や感情を直接伝達するITPという言語を開発しているサマンサが、ITPによる仮想人格の《wanna be》に小説を書かせる実験をしている中で、不治の病に体を冒されていることが分かり、死へ近づいていく様子が書かれています。
正直読みづらかったです。翻訳された小説にある壁のようなものを感じました。また、ITPに関することを十分に理解して読めていたかどうかは自信がありません。それでも面白くて読むのをやめられませんでした。死病に冒されているとわかっていてもサマンサは傲慢すぎるように感じるし、なんだかよくわかんないところはいっぱいあるし、なんで面白いと思ったのかわからないけど、それでも面白かった。
《wanna be》の最後は涙が出そうでした。そこで《wanna be》がたどり着いた物語の結論はすごいと思った。この物語はその結論のために書かれている本だと思いました。

〈これらが商品たりえたのは、言語を使って、読み手から一秒でも一瞬でも“言語を奪う”ことができたからだと思うのです〉 p267

〈“物語”の技術とは、「言語から解放される一瞬」をどう作り出すのかの方法論だと思うのです。この一瞬を求めて、過去の人々は、題材を漁り、表現を試し、道具立てを工夫し、筋立てに神経を払ったのではないでしょうか。(略)〉 p267

これは、サマンサが死へ向かう物語ですが、物語とはなにかがかいてある物語ともいえるんじゃないかと思います。
ところで読了後に長谷先生のブログを見たら、「この物語は物語の歴史的に『楽園』から2000年ほどさかのぼったもの」と書かれていた*2ので『楽園』を読み返したくなりました。

*1:青灰色 blog: 『あなたのための物語』作業終了しました http://pub.ne.jp/para_shift/?entry_id=2331571

*2:青灰色 blog: 『あなたのための物語』が発売になりました http://pub.ne.jp/para_shift/?entry_id=2368983